追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
上下水道もなく井戸を使用している様子で、モニカが一軒の民家の裏手を通りかかったら住民が十人ほど集まってなにかを相談していた。

『今日はここを掘ろう。水道が通るのを待ってられねぇ』

『あっちの井戸は今にも枯れそうよ。今度こそ水が出てくれないと困るわ』

(どうしよう。声をかけようかしら。でも……)

モニカは地下の水脈を感じることができる。

井戸掘りにはもってこいの能力で、ロストブにいた時には度々活躍していた。

けれども誰にでも水脈を教えたわけではなく、聖職者に指示された時だけだ。

『魔力を使いすぎれば精霊が離れるぞ。モニカは聖女にならなければいかん。我々が許した時以外に力を使うな』

導師にそう教えられていたからだ。

精霊憑きで生まれ一緒に修練所で育った子らの中に、突然魔力を失う者もいた。

そういう状態を“精霊が離れる”という。

魔力の使い方を誤れば精霊に嫌われ体から出ていかれるそうで、一度憑いた精霊が離れると宿主は死んでしまう。

モニカは四歳の時にその話を聞かされて、しばらくは怖くてひとりで眠れなかった。

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