追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
教会の教えは今でも心に深く刻まれたままで、モニカの行動を制御している。

水脈を教えるのを諦めたモニカはチクリとした罪悪感を覚えつつ、井戸掘りに困っている住民に背を向けのだ。

モニカはシュナイザーに責められているような気がして、波音に消されそうな声で答える。

「魔力を闇雲に使ってはいけないんです。精霊が離れてしまうから。そうなったら私は死んでしまうんです」

眉尻を下げてモニカが答えれば、シュナイザーが頷いた。

それなら仕方ないと言ってくれるのかと思いきや違うようだ。

「ロストブの教会は腐っている。聖職者の言葉を信じるな」

忌々しげにそう言ったシュナイザーは、精霊が離れても宿主が死ぬことはないと教えてくれた。

「本当ですか!?」

「ああ。昨日、騎竜兵隊長のハンスに会っただろ。あいつは風の精霊憑きだった。十三で精霊が離れた後も生きている」

精霊憑きは聖地のあるロストブでしか生まれないと聞かされたのに、バーヘリダムにも存在するとは……モニカはそれにも驚いた。

「教会の先生たちは間違いを信じているんですか?」

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