追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「猫? そんな可愛い生き物に例えるなよ。鷹か鷲か、シュナイザーは、猛禽類が似合う」

執務机に歩み寄ったベルナールが持参した書類を未処理の箱に追加して、「これは本日中に」とにっこり微笑んだ。

シュナイザーは思い切り鼻の付け根に皺を寄せたが、文句は言わず「わかった」と頷いた。

ベルナールは出て行かず、窓辺に移動すると外を眺める。

ここは三階で、整備された花壇や噴水、ガーデンテーブルが品よく配置された中庭に面している。

その向こう側、二階の端の窓がモニカの部屋だ。

「モニカはどう?」

ベルナールの口調はいつも通り穏やかだが、長い付き合いであるシュナイザーはその声に心配を感じ取った。

「まだ完全に洗脳は解けていないな。変化はしているようだが」

三十分ほど前にモニカが外出したと侍女のナターシャが知らせに来たので、騎竜兵隊長のハンスに護衛も兼ねて尾行に行かせた。

その際にナターシャからモニカの様子も聞き取りしている。

モニカは聖女になれなかったことを残念がっているそうだが、感謝されたかったという理由はいただけない。

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