追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
モニカが聖女に覚醒できないのはそういった心の問題で、死への恐怖心を乗り越えられるほど民を救いたいと思う強い意志が必要なのだ。

シュナイザーはそれを、まだ皇帝になる前にバンジャマンから教わった。

眩しそうに中庭を見ていたベルナールが、逆光の中で振り向く。

「モニカは覚醒できると思う?」

「なんのために迎えに行ったと思っているんだ。してもらわないと困る。ロストブの教会は水の精霊憑きが他にもいると考えて探しているようだが、モニカしかいない。水は特別なんだ。同時に複数人は生まれない」

「それもバンジャマンさんに言われたこと? 俺もあの人には恩を感じてるけど、信じ切っていいのかな」

「三百年前の聖女を知っているのはバンじいだけだからな。俺は信じる」

モニカが初めて城を抜け出した時、時間指定して乗合馬車に乗せたのはバンジャマンに出会わせるためだった。

それをベルナールに話せば、首を傾げられる。

「だったら、まどろっこしいことをせずに鶴亀亭に連れて行けばよかったのに」

「それじゃ意味がない」

シュナイザーは幼い日のモニカを思い出していた。

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