追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「暑いね。換気しよう」

しかし中庭に面した窓は風が入りにくく、ベルナールが顔をしかめて振り向く。

「シュナイザー」

次に「はいはい」とおざなりな返事をしたのはシュナイザーだ。

開けられた窓に向けた指先をクイと曲げれば、途端に上空からの涼しい風が入り込んだ。

「サンキュ。気持ちいいな」

目を閉じたベルナールが風に前髪をそよがせたらドアがノックされ、ふたりはただちに皇帝と宰相らしい顔つきを取り戻した。

「入れ」

「失礼いたします」

おずおずとドアを開けたのはお仕着せ姿の従僕だ。

シュナイザーは近侍をつけていない。

実務の補佐役はベルナールで、身の回りの世話は不特定の従僕たちにさせている。

身辺を探られたくないという事情があるためだ。

「ゴウランガ公爵がお見えです。議会の前に陛下にお会いしたいとのことです」

(また来たのか)

ゴウランガ公爵は六十歳で恰幅がよく、白髪交じりのダークブラウンの髪の毛先を外巻きにしている。

鷲鼻と大きな目と口、顔のパーツは大きめで、中背なのに見た目も存在感が強い。

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