追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
公爵の顔を思い浮かべたシュナイザーは舌打ちしたくなるのをこらえると、議場横の控室で待たせておくよう返事をして従僕を下がらせた。

この後、十四時から定例会議が開催され、議員資格のある貴族五十人が集まるのだが、その中にゴウランガ公爵は入っていない。

それなのに月に一度の議会の日には、自分を忘れるなと言わんばかりに必ずやってくる。

大きなため息をついてから、シュナイザーは立ち上がった。

「行くの?」

「ああ。無視できない」

ゴウランガ家は古くからの名門で、並々ならぬ財力と影響力を持っている。

シュナイザーのベーベルシュタム家は前帝の遠縁とは言っても力は弱かった。

前帝の息子である皇太子が暗殺されたため、皇帝候補者が複数人いるという異常事態の中で、シュナイザーを強く推して玉座に座らせてくれたのは、前帝時代の宰相であったゴウランガ公爵だ。

けれどもシュナイザーを意のままに操ろうとしている魂胆は見え見えであったため、即位してから宰相の任を解き、“永年最高顧問”という役職を新たに設けて公爵に与えた。

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