追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
貴族女性のお手本のような淑女に見えるが、以前ダリアの侍女勤めをしていたナターシャから性悪な実態を聞いているため、いい印象はない。

前庭の見える窓側の上座に堂々と座る公爵は、約束もなく訪問したのを詫びるのではなく文句を言う。

「お元気そうですな。我が家の晩餐にお招きしてもお越しくださらないので、年寄りの方から会いに来ましたぞ」

わざわざ来てやったのだからありがたがれと言いたげだ。

シュナイザーは同じテーブルには着かず、壁際のソファに腰を下ろして、あえて偉そうに足を組んだ。

即位に際しては随分世話になったとはいえ、舐められては困る。

「仕事が山積していると断り状に書いたはずですが。公爵ははつらつとして年寄りには見えませんよ。用があるなら今後も出向いてください。会わないとは言いませんので」

公爵の気分を害さない程度の嫌味は言わせてもらった。

普通の貴族なら皇帝を怒らせたかと焦るところだろうに、公爵は「おやおや」と笑っただけだ。

「睡眠不足ですかな? おいたわしい。イラつく時には花を愛でれば癒されますぞ。ダリア、ご挨拶しなさい」

「はい、お父様」

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