追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「似合いのふたりですな。陛下は二十二になられましたか。国民を安心させるためにはそろそろ妃を迎え子を成すべきです。陛下のためにダリアへの求婚は全て断っておりますが、お早めにお願いいたしますぞ」

「もう、お父様ったら」

公爵は機嫌よさそうに笑い、ダリアは顔を伏せて恥ずかしがる素振りを見せている。

これまでもダリアを皇帝妃にという態度であったが、言葉にして直接押しつけられたのは今日が初めてだ。

(どうしたものか……)

モニカを妃に考えていることはまだ公表していない。

婚約の儀を省いたのは面倒だからだとモニカには話したが、公爵に知られるのを少しでも遅らせようとしてのことだった。

バーヘリダム一の有力貴族を敵に回してもいいことはないのだから。

シュナイザーはニタリと笑む公爵の顔をじっと見据えて思案する。

(できれば婚姻の儀を執り行う年末まで隠しておきたかったが、ここで拒否しなければダリアとの婚約が内定したかのように吹聴されそうだ。仕方ない)

公爵との良好で平穏な関係もここまでかとシュナイザーは腹をくくった。

< 79 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop