契約結婚のススメ
 言いなりにはなりたくない。

 ベッドの上だけじゃなく、色んな意味で。

「陽菜、ほら、こっち向いて」

 顎に指先をかけられて、一貴さんの方に顔を向かされた。

 最初は唇が触れるだけ。

 少しずつ激しくなっていき、私がつい夢中になってしまうまで、熱いキスは繰り返される。

「俺がいない間に悪さをしないように、たっぷりと痕を残さなきゃな」

「悪さなんて」

 私が浮気なんてするわけないじゃない。

「や、やめて」

 自分が浮気しているからって、私まで疑わないで。

 そういえばどっちが浮気になるんだろう?

 美加との付き合いが長いのなら、私が浮気相手とか?

 でも私は一貴さんの妻だし。

「なぁ、陽菜」

 チュッと軽く唇にキスをした一貴さんが、私の頬を撫でる。

「一緒に行こう」

 まただ。

 一貴さんは私に一緒にロサンゼルスに行ってほしいらしい。

「でも、おじいちゃんが心配だから」

 私は行かない。

「じゃあ俺は心配じゃないのか?」

「一貴さんは元気だし」
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