契約結婚のススメ

「かわいい顔して、強情なやつめ」

 悪い子にはお仕置きだ、と言い出した彼は一気に私の脚を持ち上げた。

「あっ……。だめ」

 一貴さんは意地悪だ。

 どうして私が行かないか、理由には、気づいてもいないらしい。

 抱かれて一貴さんに溺れてしまう私を、あなたはいつか捨てるんでしょう?

「あぁ……。うっ」

 誰も知ってる人がいないロサンゼルスで、あなたの帰りを待つ毎日の中で。

 あなただけを頼りに、こんなふうに抱かれ続けたら、私は跡形もなく、心のすべてを持っていかれてしまう。

 だから絶対に行けないの。

 それなのに――。

「陽菜、愛してる。愛してるよ」

 どうして愛なんて囁くんだろう。

 なんて残酷な人なんだろう。

 私は信じない。

 だって、女性誌に書いてあったから。ピロートークは信じてはいけないんだって……。


 次の日、一貴さんを送り出した私は、私の実母父、唯一の血縁者である祖父がいる店に行った。

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