契約結婚のススメ
 右に左に振り回される度に、俺はがっつりと陽菜に心を掴まれている。どうにもならないほどにな。鉄の鎖に繋がれた気分だ。

 はぁ……。

 どうやったらこの愛が届くんだ。



 空港に到着し、搭乗を待つ間ファーストクラス専用のロビーに向かうと、知った顔がいた。

「あら」
 柳美加だ。

「もしかして次のLAX行き?」

「そうだが?」

「じゃあ一緒だわ」

 どうぞと促されて向かいの席に腰を下ろした。

 同時期に同じ場所に行くとなれば、こいつとは一度話をしておかなきゃいけない。

 美加は身を乗り出すようにテーブルに肘をつく、自慢の胸もとを強調するように腕を交差させる。

「仕事か?」

「いいえ、オフよ。買い物でもしようかと思ってるの」

 まさか、偶然なんだよな?

「食事でもしましょう? 連絡待ってるわ」

「いや、俺はもう既婚者だ。気軽に女性とふたりきりで会うわけにはいかない」

「あらそう」

「なにか俺に用か?」

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