契約結婚のススメ
「ええ、お陰様で」とは言いながら、シノさんの表情がどこか暗い。気になるとは聞いていいものか迷う。枇杷亭のことはもう気にしないと決めたんだし。
でも。もしかしたら、美加が介入してきたのだろうか。
そう思ったらつい「なにかあったの?」と聞いてしまった。
「実は社長と板長の折り合いが悪くて」
「え?」
意外な話に首を傾げた。板長は現社長である叔父よりも年上で、私の祖父の代から枇杷亭にいる叩き上げの料理人だ。
「社長の奥様が色々意見を言ってくるようになって」
「ええ? だって叔母さんは婦人服の店があるんじゃないの?」
「辞めたんですよ。赤字続きで潰したんです」
シノさんが吐き捨てるように言う。
叔母は私も苦手だからなんとなくわかる。お嬢様育ちで人を顎で使うような傲慢な態度を取る悪い癖がある。
「そうだったの」
ますます気落ちした様子のシノさんと話を聞くうち、義母がお風呂からあがってリビングに来た。
しょんぼりしているシノさんの肩に手を掛ける。
でも。もしかしたら、美加が介入してきたのだろうか。
そう思ったらつい「なにかあったの?」と聞いてしまった。
「実は社長と板長の折り合いが悪くて」
「え?」
意外な話に首を傾げた。板長は現社長である叔父よりも年上で、私の祖父の代から枇杷亭にいる叩き上げの料理人だ。
「社長の奥様が色々意見を言ってくるようになって」
「ええ? だって叔母さんは婦人服の店があるんじゃないの?」
「辞めたんですよ。赤字続きで潰したんです」
シノさんが吐き捨てるように言う。
叔母は私も苦手だからなんとなくわかる。お嬢様育ちで人を顎で使うような傲慢な態度を取る悪い癖がある。
「そうだったの」
ますます気落ちした様子のシノさんと話を聞くうち、義母がお風呂からあがってリビングに来た。
しょんぼりしているシノさんの肩に手を掛ける。