契約結婚のススメ
「希子さんが俺とお前の関係を誤解している。それが解消されない限り、いいか! 伯父もお前も共倒れにしてやるぞ。ふざけるなよ」

『――わかったわ』

「今日中だ。わかったな。さもないとお前の明日はないと思え。わかったなら返事をしろ」 

『はい……』

 電話を切ってスマートホンを座席に放り投げると、バックミラー越しに運転手の仰天した顔が見えた。

「忘れろ」

「は、はい」

 それにしてもなにがあった。

 ゴシップやSNSの写真だけで、いくらなんでも離婚とは言い出さないだろう。

 なにかあるはずだ。

 ロサンゼルスではゆっくり話ができた。

 俺たちにもう契約なんてないと、ずっと夫婦でいようと言って聞かせた。それなのに――。

『でも私には一貴さんの妻は務まらない』

『なにを言ってるんだ。すでにもう陽菜は俺の妻だろう?』

 キスをして、抱いて。愛を囁いて、お前も納得しただろう?

 陽菜。いったいどうしたんだ。



 ***



< 183 / 203 >

この作品をシェア

pagetop