契約結婚のススメ
 インターホンが鳴ったのは、義母が帰ってきて間もなくだった。

「奥様、柳美加さんがいらしてますが」

 え? 美加が?

「あらそう。どうぞ通して」

 義母が心配そうに私を振り返る。

「ちょうどよかった。枇杷亭の話を断るわ。どうする? 同席する? 部屋いてもいいのよ? 帰ったら知らせるから」

「同席する」

「そう」

 義母はにっこりと微笑む。

「私がついているから、聞きたいことはしっかりと聞きなさい」

 私はキュッと唇を結んでうなずいた。


「失礼します」

 美加は神妙な顔をして頭を下げた。

「どうぞ座って。コーヒーでいいかしら」

「はい。すみません」

 義母が席を立つや否や、美加は突然床に膝をつき土下座をした。

「申し訳ありませんでした。誤解を招く写真に、先日の電話。本当に申し訳ありませんでした」

 突然で予想外の行動にギョッとして、思わず顎を引いた。

 いったいなんなの?

 義母も慌てた。

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