契約結婚のススメ
「ちょ、ちょっとあなた。どうしたの、いいなり。とにかく立って」

 義母に抱えられるようにして立ち上がった美加は、私の向かいの席のソファーに腰を下ろす。

「写真って、ロサンゼルス空港での匂わせ写真?」

 義母に聞かれて美加は「はい」と、うなずく。

「私はもともとスキャンダルを利用してここまできました。南城さんとは実際なにもありませんし、ロサンゼルスでも一度も会っていません。ですがそういった噂が刺激になって注目を集まるものですから、つい」

 つい、ね。

「だから利用したっていうのね。陽菜がどう思うか想像できなかったの?」

「申し訳なかったです。実際はなにもないので、見過ごしていただけるかと……」

 神妙な様子で美加はうつむく。

 この人は女優だ。本音なんてわからない。

「それで、一貴さんに言われて、ここに来たってわけなの?」

「――はい。大変お怒りで」

 そうか。それで、来たんだ。

「陽菜。なにかある? この際だからなにでも言ってみたら?」

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