契約結婚のススメ
 そのストレスも病気の発端になったんだと思うが、父は相当無理をしたらしい。

 お医者さまは、痛みなどの症状があったはずだと言うけれど、父はなにも言わず、私たち家族に隠し通した。

『お父さん、最近痩せたよね? 顔色も良くないよ? 大丈夫?』

『ちょっとダイエットしているだけだから、心配ないよ』

 父は上手に、はぐらかしていた。

 無事に手術は成功したけれど、担当医の宣告は厳しかった。
 楽観はできないという。

 それでもここ半年近くは調子もよくて、一度は仕事も復活したけれど先月からまた入院している。少しずつ元気になっているようには見えるても、お医者さまの表情は依然として硬い。

 早期発見なら根治も望めたらしいが、すべては後の祭りである。もっともっと強く言えばよかったのにと、後悔ばかりが先に立つ。
 お父さん……。

『お父さん、ちゃんと健康診断しているんだよね?』

『うんうん。ちょっと仕事が忙しくてね』

 あの時、引っ張ってでも連れて行けばよかった。何度そう思ったか。
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