契約結婚のススメ
「そういうものよ」

「でも、おかあさんのお見合いの一回目がお父さんだったんでしょ?」

「ふふ。まあそうだったけど」

「お父さんに一目惚れだったって本当?」

「ふふ、まあね」

 義母こそ、美魔女のコンテストで優勝できそうなほど美人なのに、お父さんは幸せね。

 笑い合っているうちに、声が聞こえてきた。

「お連れ様は、先にお見えになっています」

 いよいよだ。

 瞼を閉じて、大きく息を吸った。

 たとえどんな容貌の人でも、それを上回る財力があるんだもの、それで十分。私は今日のお相手に決める。
 そう決意を固めて顔を上げ――。

一貴(いつき)です。よろしく」

 え? どうして?
 なぜ、彼がここに。

「あっ。つ、椿山陽菜です。よろしくお願いします」

 イタリア語が堪能なイケメンの彼が、目の前にいる。

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