契約結婚のススメ

「南城専務、私は女性として今回ばかりは賛成できません」

 ん? 悩みの種は俺の結婚なのか?

「なんだそれは」

「恋人のために政略結婚をして料亭を手に入れるなんて。まだ二十歳そこそこのお嬢さんがかわいそうじゃありませんか」

「は?」

 おいおい。なにがどうなるとそうなるんだ。

「なにを言っているのか俺にはさっぱりわからないな。そもそも恋人って誰だ」

「柳美加ですよ。今月発売の雑誌のインタビューでいつか料亭のような店を持ちたいとありました」

 森下はしたり顔で続ける。

「幾度となく週刊誌を賑わせ、先週もパーティーに同伴してらした。私はてっきり恋人かと思っていましたが」

 眉間に皺を寄せる森下は、美加を嫌っている。

 まぁそうだろう。美加は森下に敵意剥き出しだ。理由は知らないが、そんな態度をとられて好意を持つはずもない。
 森下が美加を嫌うのは当然だが、だからといってなぜ美加が俺の恋人になる?

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