契約結婚のススメ
 どうやら純粋に喜んでいるらしい、陽菜は心からうれしそうな笑顔で俺を見上げる。

「あの有名な『大河』ですか? 千人とか乗れて世界一周の旅とかの」

「大河ほどは大きくないが、数百人は収容できる船だ。披露宴はメインラウンジを会場にして、歓談が始まれば自由にしてもらおうかと思ってる。オープンデッキとかプールとかシアターもあるし、ブティックもあるからな。後で色々相談しよう」

「すごい! 楽しみです」

 靴のヒールを差し引いて、身長は一六十センチくらいか。

 俺が一八三だからそんなもんだろう。

 このまま唇を落とせばどうなるか。
 なんて思ってしまうくらい、今夜の陽菜はかわいい。

 いや、綺麗だ。

「まだ予定は立てられないが、新婚旅行はクルーザーの旅にしようか。もし気に入ったらな」
「はい!」

 クスッ。いい返事だが、しゃべると途端に子供に戻るのか。
 俺たちがどういう関係かわかっているのか? 恋人なんだぞ?

 やっぱり慣れてもらうためにも――。

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