契約結婚のススメ

「ね、ね、陽菜。初夜はもう迎えてるんでしょ。一緒に住んでいるんだもんね」
 ブッ。
「な、なにを言うかなぁ、もう」

 みんなして、興味津々に瞳を輝かせる。

「だって、陽菜。初めてじゃん」
「うんうん。陽菜はママが厳しいから、男っ気なかったしね」

「もう、やめて」

「いいから、ほら。どうだったのよ、陽菜」

「そりゃあ」
 ええ、ご想像通り。彼はとっても優しかったですよ。

『どうせ初めてなんだろう?』
『どうしてわかったの?』

『キスであんなに緊張してたら、わかるだろ』

 一貴さんはとても優しかった。

 怯えていた私が心を開くまで、撫でて優しいキスをして。『陽菜』って耳もとで囁いて。

 そのおかげで痛みを感じたのも最初だけ。
 あとは……。

「ムフッ」

「あー! にやけてる!」
「やらしいー」

「あはは。だって!変なこと聞くから」

 正直言って幸せなんだ。
 不安以上に、今はね。心から幸せ。

「運命の糸が切れないようにがんばるね」

「そうだ! がんばれ陽菜!」

 〝赤い糸〟そんなものがもし、本当にあるなら。私たちは繋がれているって信じたいな。
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