契約結婚のススメ
 この結婚は、いっときだけの契約結婚なのに。

 もし一貴さんと美加の間になにかあっても、浮気をしていいと言った私には責める資格もないのに。

 今日を迎えるまでの半年が幸せ過ぎたから、もしかしたらなんて夢を見て、本当の夫婦になれるのかもと思ってしまった。

 傷つくなんて馬鹿だ。
 わかっているくせに一貴さんと過ごす毎日が楽しくて、つい。

 一貴さんは本当に素敵。なにもかも。

 不動産屋が進めてきたマンションはほとんど高層のタワーマンションだった。低層のレジデンスもいくつかあったけれど、どこもタワーマンションより家賃が高くて。
 私は希望を言える立場じゃないから、あきらめていたけれど。

『低層のレジデンスを考えているんです』と一貴さんが言ってくれた。

『陽菜は高層マンションとか苦手なんだろう?』

 私と会う時間が取れない分、義母と一貴さんのお母さまが頻繁に会って情報を交換していたらしい。私の好みもウイークポイントも、色々知っていた。

『寒がりなんだろう?』

『はい。冬はちょっと苦手です。一貴さんは、朝が苦手なんですよね』

『あはは、バレたか』

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