契約結婚のススメ
 会えば笑い合い、時間を忘れるほど楽しくて。だからつい……。

 半年の婚約期間は、この花火のようなものだったな。

 パッと開いて消える夢、か。


「しかし、いいなクルーザー。俺もいつか引退したら、こんなすごい豪華客船で世界一周してみたいよ。一貴さんに頼んでおかなきゃな」

「ふふ。お願いしておくね」

 美加が女将になったら叔父さんはどうなってしまうんだろう。美加と一緒にやっていけるのかな。

「叔父さん、結納とか色々ありがとうね」

「お安い御用だ。仲居さんたちも皆喜んでいたよ」

 椿山の邸は枇杷亭と塀一枚を挟んだ隣り合わせだ。木戸をくぐり従業員が休憩にやってきたり、時には泊まったりするものだから、家族のような関係である。

 今日は枇杷亭を臨時休業にして、仲居さんたちも参加してくれている。
 みんな、私の結婚を心から喜んでくれた。

 あたりを見回すと、その先にいた仲居さんと目が合って、手を振ってくれた。

 ふふ、ありがとう。

「叔父さん、叔母さんは大丈夫?」

「ん? ああ、先に帰ったよ。落ち着かなくてごめんな」

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