契約結婚のススメ
 婚約中とは違う。長期出張はついていった方がいい。妻として彼を支えなきゃいけないと、わかっている。わかっているけれど――。

 私は行きたくない。

 心の中でため息をつき、ちらりと前を見ると、一貴さんは黙々と箸を運んでいた。

 日本食を堪能しているのだろう。

 ごめんなさい一貴さん。私、ダメな奥さんだよね。


 食事を終えて、テレビニュースを見たりしばしまったりとして。

 やがて甘くて切ない夜が訪れる――。

「陽菜、いい加減慣れたらどうだ」

 恥ずかしさに耐えきれず横を向く私を、一貴さんはクスッと笑う。

「三日と開かずに抱いているのに、いつまで経っても恥ずかしそうだな」

 慣れるわけがない。

 多分何年経ってもずっとこのままだ。

 ライトは薄灯りでないと嫌だし、胸が露になると手で隠したくなる。

 その手を一貴さんの手に抑えられて、顔を埋められるともう……。しまいには羞恥心もなにもかも、どこかに飛んでいってしまうけど、そうなるまでは、どこまでも抵抗したくなる。

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