恋はゆるく,深くがモットーでしょ?

すき

楓と約束した最終日まで,俺たちの間に会話はなく,昼はただの睡眠の時間になっていた。

でも,それはそれで心地よい空気感があった。

最終日になって,俺はまだ返事を貰っていなかった。

もしまだ答えがでないといわれても,俺はそれを受け入れる。

楓に呼ばれて迎えに行こうとした放課後,俺は一人の女子に捕まった。



「さーとるっ! 今眠くなさそうだから良いよね!? ちょっとだけ話そ!」



米沢 流蘭(よねざわ るら)

唯一俺を本気で好きな女。

でも,付き合ってとかは言われたことがない。

好きだとは言われた。

そして,何故か幸せになってとも言われた。

気持ちが自分に向かないことを分かっていたのだろう。

俺をちゃんと見てれば分かること。

それでもすげぇなと思う。

でも今は……



「さっ悟!!」



俺が告白した日に頼んでから,呼び捨てにされたのは初めてだった。



「ごめんなさい。ちょっと借りてもいい?」



楓はちょっと申し訳なさそうに,それでも譲れないという意思を瞳に宿して言う。

流蘭は俺を泣きそうな顔でパッと見て,俺に聞こえて楓に聞こえない声で呟く。

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