御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました～愛を知らない彼女の婚前懐妊～

黎は菫の大学時代からの親友である比嘉果凛の恋人富川航の友人で、入社半年が過ぎた頃、果凛と食事をしているときに黎を伴った航が合流しそれ以来何度も四人で顔を合わせている。

「菫。大丈夫か？」

少しかすれた黎の声に、菫は小さくうなずいた。

黎は現在二十八歳で国内有数の企業グループである『紅尾ホールディングス』の社長令息で、いずれホールディングスのトップに立つ御曹司だ。

今は傘下の『紅尾システムソリューション』で働いている。

長身で手足が長く、顔は文句のつけようがないほど整っている。

すっと通った鼻筋や薄く形がいい唇、そして切れ長の目は女性なら誰もが二度見しそうなほどの色香を放っている。
　
初めて顔を合わせたとき、菫は心臓がきゅっと小さくなるのを感じ、黎から目が離せなかった。

それまで男性との付き合いに縁がなかった菫にようやくおとずれた初恋だった。
　
黎は肌触りのいいキャメル色のロングコートをまとい、菫を守るように抱きしめる。

「間に合ってよかった。……もう大丈夫だから安心しろ」
　
黎は菫の頬にかかった髪をそっと後ろに梳いた。