御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
急いで駆けつけたのか呼吸が荒く、微かに肩を上下させている。
 
菫は張り詰めていた気持ちが解けていくのを感じた。

黎が来てくれたのだ、もう心配する必要はない。

菫は無意識に黎のコートを両手で掴むと、身体を預けてホッと息を吐いた。

「お、おい。いきなりなにするんだよ」
 
突然現れた黎に動転していた塩田は我に返り、荒々しい声をあげる。

その声は周囲に響き、菫は小さく身体を震わせた。
 
すると菫の怯えを察した黎の手が、安心させるように彼女の背中を上下する。

「これから彼女と飲みに行くんだ。御園さん、そうだよな」
 
呂律が回らない塩田の声に、黎の口から「は?」と息が漏れ出た。

「菫が男とふたりで飲みにいくわけがない。今も無理矢理タクシーに乗せようとしていただろう」
 
怒気を含んだ声が響く。

普段の冷静で落ち着いている黎からは考えられないその声に、菫は視線を上げた。

「酔っ払っているにしても、菫をこんなに怖がらせて……今も震えてるぞ」

「な、なにを……お、俺はただ御園さんと一緒に飲みたかっただけだ」
 
塩田は視線を泳がせる。

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