御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
同時に酔いのせいか足元がふらついた。

「航、そいつのことを知ってるのか? 社員だったら今後こういうことがないように厳重に注意しておけよ」
 
怒りが収まらない黎の声に、菫の鼓動が不規則に跳ねる。

普段から航や果凛と四人で会う機会が多いせいかなにかと菫を気にかけてくれるが、ここまで怒りを隠さない彼はめずらしい。
 
航も菫と同じことを考えたようで、黎を意味ありげに見つめている。

「落ち着け。彼はうちの社員じゃないし、酔っ払ってる相手になに声を荒げてるんだよ。ほんと、菫ちゃんのこととなると人が変わるよな」
 
目の前で呆れる航に、黎は「悪いか」とつぶやき顔を背けた。

同時に菫の身体をさらに抱き寄せる。

「怖くて泣きそうになってる菫を見て、冷静でいられるかよ」

「れ、黎君」
 
黎の胸に顔を押しつけられ、菫はくぐもった声をあげた。

ここまで黎と、というより男性と密着した経験が無い菫は、ひたすら身体を固くし棒立ちのまま。
 
黎とはたしかに仲がいいが、恋人でもない単なる友人をこうして抱きしめるのはどうなのか。
 
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