御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「だよな。いきなり菫を連れ戻そうとするくらいだから、またなにかあるだろうな」

「私もそう思う」

菫は落ちこんだ声でそう言うと、再び黎の身体にぐずぐずしがみつく。

菫はベッドに入ってからずっとこの調子だ。

まるでひな鳥のように黎の側を離れようとしない。

妊娠していると伝えて気が楽になったことと久しぶりに黎とこうして一緒にいられるのがうれしくて、どうしようもなくくっついていたいのだ。

黎が伸ばした腕を枕にして胸の中にすっぽり収まり、その居心地のよさを満喫している。

黎はときおり腕枕をしている手で菫の頭を撫でながら、空いている手でスマホを操作している。

何度かメッセージのやり取りをしているが、仕事関係のようでその表情はときどき苦々しく歪んでいる。

「は? 特別料金? なんだよそれ」 

耳元に響いた荒々しい声に、菫は思わず視線を向ける。

「あ、なんでもない。大した話じゃないから」

黎はスマホに視線を向けたまま、面倒くさそうな表情を浮かべる。

菫はよっぽど手こずっている案件なのだろうと思い、片が付くまで黎の腕の中で静かに待つことにした。
 
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