御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
菫はたまらず黎の頬を両手で挟み、お互いの視線を合わせた。

「私、黎君と離れたくない」

「は? なに突然。そんなわかりきったこと、今さらどうした」

いきなり菫の手に顔を動かされ、驚いた黎は上ずった声をあげた。

それまでの気弱な様子から一変し、歯切れのいい声で思いを口にする菫に、目を丸くしている。

「え、他に気になることでもあるのか? 菫のお母さんがどうかした?」

黎は菫の顔を心配そうに見つめる。

「だって、母さんのこと大したことでもないみたいに話してるし、私が連れ戻されてもいいみたいな感じだし」

顔をしかめ拗ねた口ぶりで話す菫に、黎は目を丸くする。菫が突然なにを言い出しているのかわからないようだ。まじまじと菫の顔を見つめている。

「俺のことで悩む必要なんてないのに。俺が菫にベタ惚れだって言ってなかったか?」

「それは今初めて聞いたかも」

「だったら今言っておく」
 
黎は菫の目尻にこぼれた涙を指先でそっと撫で、今度は自分からお互いの目を合わせた。

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