御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
照れくさいながらも黎の足の間で居心地のいい態勢を探していると、菫の耳元で黎がゆっくり話し始めた。

「大したことじゃないっていうと雑な感じだけど、あながち間違ってない。俺と菫の気持ちがしっかりしていれば必要以上に不安に思うことはないし、なにがあっても俺が菫を守るからあまり悩むな。とくに俺のことならなにも悩まなくていい」

黎は口早にそう言うと、背後から回した手を菫のお腹の上に慎重に置いた。

「俺は今ここにいる赤ちゃんと菫のことだけで頭がいっぱいなんだよ。無事に生まれてくるまで気が気じゃないと思う」

菫の肩に顔を埋め、黎は不安げにため息を吐く。

「心配しないで。つわりは軽い方だしお医者様には順調だって言われてるから。それこそ必要以上に不安に思わないで」

菫はついさっき黎に言われた言葉を真似て言ってみた。

するとそれに気付いたのか、黎がクスクス笑い、背中から菫を抱きしめた。

「やっぱり母親は強いな。敵わないよ」

「ふふ。ありがと」

「あ、でも仕事は無理するなよ。この二年菫が真摯に仕事に向き合っているのを見てきたから辞めろとは言わないけど、身体が第一だ」

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