御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
初めて会った日から黎を想い続けている菫の全身は熱く、脳内はパニック状態だ。
 
隠し続けている恋心に、まさか気付いているのだろうか。
 
そう思い当たった菫がハッと表情を変えたとき、航の笑いを含んだ声が聞こえた。

「悪いなんて言ってないし、お前の気持ちはわかる。だったら、いい加減菫ちゃんと――」

「塩田っ。お前酔っ払ってなにをしでかした……え、航さん?」
 
そのとき、慌ただしい足音とともに焦った声が菫たちの背後で響いた。
 
振り返ると、野島が前屈みになり荒い息づかいで膝に両手を置いている。

「本当、申し訳ない。おい塩田、お前また酒に飲まれやがって。ほら、二次会に行くぞ」
 
野島は赤い顔で突っ立っている塩田の腕を掴んだ。

「えー、野島さーん。俺は御園さんと飲みたいんですって」

「いい加減にしろ。御園さんを気に入ってるのはわかってたけど、まさか酒の勢いで……。御園さん、申し訳ない」
 
黎の腕の中から顔を覗かせている菫に、野島が深々と頭を下げる。

「あ、あの。野島さん……」
 
いきなり謝る野島の姿に菫は慌て、黎の腕から抜け出した。

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