御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「だけどそうなるとまずいかもな」

ふと思い出したように黎は言葉を続けた。

「なにが?」

それまでとは違う低く重苦しい声音に不安を覚え、菫は顔を上げた。

「結婚式の日程は菫の体調を考えながら決めるけど、入籍だけは早々に済ませたいんだ。その前に菫の両親に挨拶にうかがうべきなのに、お母さんと俺が揉めるとやっかいだよな。きっと賛成してもらえないだろうし、最悪完全に絶縁ってこともありえる。菫はどうしたい? 俺に入籍の日を先延ばしにする気はないから、いちかばちか菫の実家に押しかけて強引に挨拶だけでも済ませる? 俺はそれでもいいぞ。菫と結婚できれば他のことはなんとでもする。・・・・・・菫?」
 
ひとり盛り上がって話し続けていた黎は、菫が腕の中でやけにおとなしいことに気付いた。

「どうした?」

眠っているのかと思い、背後からそっと顔を覗き込むと、呆然とした表情で固まっていた。

「菫?」

声をかけても菫はピクリとも動かない。

黎はお腹の赤ちゃんになにかあったのかと不安になり、素早くそして慎重に菫の身体を持ち上げ膝の上に座らせた。

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