御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
経営状態や財務状況、これからの見通しなどを公開し広報活動に活かすためのもので、昨年は稼働を始めたばかりの工場の見学会を行った。

ただちに株価に影響するわけではないが、積極的な情報開示は企業への信頼度が高まる傾向がある。

そして売り上げを後方から支えるという重要な役割を担っているのだ。

菫は経理部から取り寄せた直近の経営収支に目を通し、今後の展開を組み立て始めた。

昨夜黎には仕事で無理をしないよう言われたが、やはり目の前に仕事があれば張り切ってしまうのは仕方がない。

菫はせめて段取りよく終えて、残業をせずに帰れるようにしようと気持ちを引きしめた。

「御園さん、少しいいかな」

多くの資料を広げ集中していた菫に、声がかかる。

ハッと見回すと、部長が打ち合わせ用の部屋から顔を出し手招いている。

「あ、はい」

菫は慌てて立ち上がり、手帳を手に部長のもとに向かった。

「え、株主優待に、ですか?」

部長に向き合ってすぐ、菫は驚きの声をあげた。

「そうよ。この一年話題をよんでいる御園さんの折り紙作品、使わない手はないでしょう」

「は、はあ……」
 
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