御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
菫が黎と知り合った当時、黎には商社で働く恋人がいた。

大学時代にはモデルの経験があるかなりの美人だと航から聞いていたが、黎は恋人の話をするのを嫌がり、彼女と顔を合わせたことは一度もなかった。

誰にも会わせたくないほど彼女を大切にしていた黎は、出会って最初の正月が過ぎた辺りから航や菫との付き合いを後回しにして彼女との時間を優先し始めた。
 
それまで友達としてでもたまに会える日を心待ちにしていた菫は、滅多にしか会えなくなったさびしさに落ちこみ、自分が思っている以上に黎が好きなのだと自覚した。
 
そんな中、黎が父親から次期後継者の責任として早く結婚するよう急かされていることを知っていた航から「いよいよ黎は親父さんのためにも今の彼女と結婚する気になったんだな。そうじゃなかったら強引に仕事の調整をしてまで彼女と会わないだろうし」と聞かされ、菫は黎の結婚が近いのだろうと察した。 
 
同時に、出会って以来胸の奥に隠していた黎への恋心を、いよいよ消し去るべきときが来たのだと思い知らされた。

「菫?」
 
黎の腕の中で物思いにふけっていた菫の顔を、黎が心配そうに見つめる。

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