御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
見れば長い脚を組み、苦笑いを浮かべてふんぞり返っている。

菫はまじまじとその姿を見ながら今耳にした言葉を反芻するが、どうもぴんとこない。

ただ、悟には〝かわいい女〟と呼ぶ女性の存在があるらしい。

「あの、よくわからないんだけど、悟先輩にはその、かわいい女というか好きな女性がいるってこと? あ、だったらやっぱり私とのお見合いはなしってことで」 

「いや、ひとまず菫と見合いはしようと思ってる。そうでもしないとあの頑固者はいつまでたっても親のいいなり――」

「は? 菫が見合いなんて俺が許すわけないだろう」

なんの前触れもなく頭上から低い声が聞こえたと思うと、テーブルがバンと大きな音を立てた。

「え、黎君? どうして」
 
見上げると黎がテーブルをたたきつけた姿勢のまま悟を睨みつけている。

今の悟の話を聞いていたに違いない。

菫は慌てて立ち上がり、誤解を解こうと黎の腕をそっと掴んだ。

黎君、あの落ち着いて。なんでもないの。えっとこちらは」

「菫の見合い相手の畑中悟です。どうぞよろしく」

「悟先輩っ。私、お見合いはしないって言ってるのに」

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