御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
顔を真っ赤にしくってかかる菫を、悟はくすくす笑い面白がる。

その目はやはり中学生の頃のままで、妹を思う兄のような優しさが浮かんでいる。

「そっか」

悟は菫と黎を興味深げに眺め、微笑んだ。

「こんなイケメンが側にいるなら、見合いどころじゃないな」





その日仕事を終えて帰宅した菫は、しばらくの間ソファに横になり身体を休めた。

ここ最近つわりは軽く食欲もあるので体調はいいのだが、黎からの指示で、帰宅後しばらくは身体を休ませるようにしているのだ。

おまけに今日は突然現れた悟に見合いに前向きな発言を連発され、普段感じない疲れを感じるような気がしている。

悟は黎が現れてすぐに帰ってしまい、どうして菫との見合いにこだわっているのかわからないままだ。

やはり一度実家に戻り、母と話をした方がいいのかもしれない。

「だけど……」
 
それがベストだと思いつつ、荷が重くてなかなか実行できそうにない。

 



普段よりも早い二十二時頃に帰宅した黎は、パエリアを口にしながら菫の話に耳を傾ける。

話の中心はもちろん今日顔を合わせた悟の件だ。

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