御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「昔からあんな感じで本音がわからないの。地元にいたとき女性との噂はよく耳にしたけど、それは悟先輩が地元で知らない人はいないくらい有名な会社の後継者だからだと思う」

「……へえ」
 
向かいの席でお茶を飲んでいる菫を、黎はチラリと見る。

その表情は固く明らかに不機嫌だ。

「あ、いずれ社長になるって、黎君と同じだね。それに見た目抜群なところも同じ」

「たしかに綺麗な顔をしていたな。……自慢の幼なじみってところか?」

パエリアを食べる手を休め、黎は眉間に深い溝をつくりつっかかるような口調で問いかける。

けれど悟に思いをめぐらせている菫がそれに気付く様子はない。

「うーん。自慢、といえばそうかな。学生時代は勉強ができてスポーツならなんでも得意。トランペットでも大きな大会で賞を獲ってたし。今も三峯建設ほどの大企業で働いて、いずれはお父さんの会社を継いで社長になる。どう考えても無敵の御曹司」

「……そうだな」

指折り数えて悟を褒めあげる菫が気に入らないのか、黎は投げやりに答える。

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