御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
〝別の女と結婚しろとか強がってはこっそり泣いててさ〟
「それって菖蒲のことだ。あ……菖蒲、ごめん」
菫はリビングのソファに力なく腰をおろし、菖蒲の気持ちを思いやる。
ふと思い出したのは、中学生の頃の菖蒲だ。
入学早々菫は母親に反対されながらも好奇心には勝てず吹奏楽部に入部した。
一方菖蒲は部活に入るつもりはないと言って塾に通い始め、それぞれ別々の時間を過ごすようになった。
そんなある日家で菫が楽器の手入れをしていると、菖蒲がその様子を食い入るように眺めていた。
吹奏楽にも楽器にも興味はないと言っていたのに、まるで宝物を見るような目でトランペットを眺めていた。
きっと、菖蒲もトランペットを吹いてみたかったのだ。
けれど自分のことで精一杯だった菫は菖蒲の気持ちをくみ取れず、その日を境になにが変わるわけでもなかった。
今ならわかる菖蒲の切ない思いを察し、菫は切なくなる。
親に自分の思いを伝えず塾に通っていた菖蒲。
その頃から地元の国立大学に入ると決めていた彼女にとって塾通いは絶対で、部活に割く時間はなかったのだ。
「それって菖蒲のことだ。あ……菖蒲、ごめん」
菫はリビングのソファに力なく腰をおろし、菖蒲の気持ちを思いやる。
ふと思い出したのは、中学生の頃の菖蒲だ。
入学早々菫は母親に反対されながらも好奇心には勝てず吹奏楽部に入部した。
一方菖蒲は部活に入るつもりはないと言って塾に通い始め、それぞれ別々の時間を過ごすようになった。
そんなある日家で菫が楽器の手入れをしていると、菖蒲がその様子を食い入るように眺めていた。
吹奏楽にも楽器にも興味はないと言っていたのに、まるで宝物を見るような目でトランペットを眺めていた。
きっと、菖蒲もトランペットを吹いてみたかったのだ。
けれど自分のことで精一杯だった菫は菖蒲の気持ちをくみ取れず、その日を境になにが変わるわけでもなかった。
今ならわかる菖蒲の切ない思いを察し、菫は切なくなる。
親に自分の思いを伝えず塾に通っていた菖蒲。
その頃から地元の国立大学に入ると決めていた彼女にとって塾通いは絶対で、部活に割く時間はなかったのだ。