御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
第五章 愛する人についていく
『悪い。明日帰れそうにないんだ。金曜日のハンバーグにも行けそうにない。本当にごめん』

「そっか。ハンバーグなら日を変えればいいから気にしないけど、大丈夫なの? なにかトラブル?」

出張先からかかってきた黎の電話に、菫は肩を落とした。

ひと晩我慢すれば黎に会えると思っていたのにと、ひどくショックを受けた。

黎は深夜十二時を過ぎた今もまだホテルで仕事をしているらしく、声に疲れが滲んでいる。

『先方からの確認事項が多くて営業が用意していた資料じゃ追いつかないんだよ。開発の俺が同行していてよかったけど、こうなったら絶対受注してやるって営業もやけに張り切ってるしで帰れそうにないんだ』

「大変だね。私のことなら気にしなくていいから頑張って」

黎の声に疲れはあれどやる気も感じられる。

本来仕事を最優先に考える黎にとって、中途半端に終わらせたくないのだろう。

『そっちはどう? なにもなかったか? あ、ちびはどうだ?』

「大丈夫なにもないし、ちびちゃんも頑張って大きくなってると思うよ」

菫はベッドから起き上がり、スマホを持ち直した。

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