御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
早めに寝ていたのだが、黎からの電話に起こされたのだ。

『どうした? 声が変だけどまたなにかあったのか? まさかあの男が会社に来たのか?』

「あの男? あ、もしかして悟先輩?」

『まだ見合いをあきらめてないのか? だったら会社に行かずに俺が帰るまで家にいろ』

焦る黎の声がおかしくて、菫はくすりと笑う。

「悟先輩とはなにもないよ。それにお見合いはしないから安心して」

もともと見合いをするつもりなどないうえに、黎の子どもを授かった今他の男性との将来は考えられない。

『だったらいいけど。もしもなにかあれば連絡しろよ』

「わかってる。心配しすぎ」

菫は呆れた声で答える。

『それは自覚してる。今まで菫と離れていても平気だったのに、自分のものにした途端不安で仕方がないんだ。こんなことなら冗談抜きでこっちに連れてくればよかったよ』

「私もそっちに行きたい。ひとりはやっぱりさびしいね」

黎の言葉につられて菫もさびしいとつい本音を口にする。

頭では仕事だから仕方がないとわかっていても、やはり会いたくて仕方がない。

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