御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
『ああ、そう言えばこっちの書店でも菫の作品集が積まれていたぞ。入ってすぐの目立つ場所だ。よかったな』

「ありがとう。でも会社のものであって私の作品集じゃないから」

『いや、俺にとっては菫の作品集。誇らしいよ』

「うん……ありがと」

スマホ越しに聞こえる黎の温かな声に菫は声を詰まらせる。

海外とも関係がある黎の仕事に比べれば菫の仕事のスケールは小さいが、いい結果を出せた自分が誇らしく、黎にもそう思ってもらえたことがなによりうれしい。

『仕事で結果を出したときの達成感はかなりのものだよな。まあ、俺はあんなバカでかい会社を背負うプレッシャーで達成感どころの話じゃないけど。それでも逃げるつもりもないし楽しもうと思ってる』

気合いが入った力強い黎の言葉に菫はうなずく。

やはり黎にとって仕事は最優先の案件なのだ。

それは後継者という逃げられない立場にいるからではなく、きっと仕事自体が好きだからだろう。

それに口では面倒だと言いながらも紅尾ホールディングスを大切に思っているのは明らかだ。

菫はふと妊娠のことが気になり不安を覚えた。

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