御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「雲がないからすごく綺麗に見えるね」

日中から続く晴天のおかげで雲ひとつなく、空には金色に輝く満月が浮かんでいる。

「最近忙しくて月や星を見る余裕なんてなかったな」

黎はしばらくの間満月を眺めた後、深い息をひとつ吐いて菫に視線を向けた。

「満月のせいだろうな。菫を困らせないと決めてるのに自信がなくなってきた。あ、一月の満月をなんて呼ぶか知ってるか?」

「えっと……黎君?」

黎の言葉の前半がうまく聞き取れず気になるが、とくに表情も変わらないところをみると大した話ではなかったのだろう。

菫は聞き返すことなく続く問いについて考え始めた。

「ちょっと待ってね」

黎の問いに菫は記憶をたどる。

会社のホームページに掲載する折り紙作品を月に一度更新する際に、月ごとの行事や和風月名などと合わせて新月の呼び名も確認しているのだ。

中秋の名月で知られる九月の満月はハーベストムーンといって、収穫を喜ぶ月にふさわしい呼び名だ。

「一月……あ、ウルフムーン」

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