御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
この時期はネイティブアメリカンが尊敬の念を抱いているオオカミの繁殖期で、遠吠えがよく聞こえてくるからそう呼ばれているというのが一般的な説だ。

「残念ながら、お正月にちなんだ作品を作ったから今月のうちのホームページにオオカミは登場しなかったの。オオカミって子どもたちにあまり馴染みがないし」

「菫は?」

「え、私?」

月を眺めていた菫の顔を覗きこむ。

端正な顔でジッと見つめられ、菫は思わず後ずさる。

「オオカミに遭遇したこと、ある?」

「ないない。オオカミなんて動物園でしか見たことない」

黎がなぜそんな質問をするのかがわからず、菫は首をかしげた。

満月の話をしていただけなのに、突然オオカミに話題が飛んでしまった。

「普通はそうだな。だけど菫が気付いてないだけで、オオカミたちに狙われてたんだろうな」

黎は困惑する菫に含みのある声でそう言って、再び歩き始めた。

つながれた手に引っ張られ、菫は黎の後をついて歩く。

「狙われてたってどういう意味? 街中にオオカミがいるわけないでしょう? 冗談ばかり」

菫の言葉を聞き流し、黎はなんでもなかったかのように歩を進める。

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