御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「だけど、悟先輩には謝らなきゃ。愛する人の口から他の女性と結婚してほしいなんて言われて、いくらあの悟先輩でも傷ついてるはずだよ」

「あの悟先輩ってなんだよ。それこそ傷つくぞ」

突然低い声が聞こえたと同時に障子が開くと、そこに悟が顔をしかめて立っていた。

「悟君、え、どうして?」

「は? 滅多に会えない恋人が近くに来てるって聞いて、会いに来ないわけがないだろ。菫から電話をもらって、急いで家を出たんだよ」

悟は不機嫌な表情で部屋に足を踏み入れ、目を丸くしている菖蒲の隣に腰を下ろした。

そして座卓に片ひじを置いて頬杖をつくと、笑顔を封印して菖蒲を見つめる。
 
菫は邪魔にならないよう息を潜め、ふたりの様子を見守ることにした。

「あ、あの、悟君。ごめんなさい。菫ちゃんと結婚してなんてひどいこと言っちゃって。反省してます」

菖蒲は身体を小さくし、悟に頭を下げる。

悟は顔をしかめたまましばらく菖蒲を眺めていたが、そのうち肩を落とし、大きなため息を吐きだした。

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