御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました～愛を知らない彼女の婚前懐妊～

どうやらこれまで菖蒲に散々結婚しないとごねられ、これ以上待てないようだ。
　
菖蒲はしばらくの間無言で婚姻届を見つめていたかと思うと、おもむろにペンを手に取り届けに記入を始めた。

一心に書き続けた菖蒲は、最後に漏れがないか慎重に確認しそれを悟に差し出した。

悟は素早く受け取ると、いそいそと封筒に戻し胸元の内ポケットにしまいこむ。

その無駄のない動きは悟の結婚への想いの強さを表しているようで、菫は微笑ましい思いで見ていた。

「私も好きだから。本当はすぐにでも結婚したかったの」

微かに震える声に視線を向けると、菖蒲の目から涙がこぼれ落ちている。

「私、いいんだよね。幼稚園の先生を辞めずに悟君のお嫁さんになっても、いいんだよね」

手の甲で涙を拭いながら必死で笑顔を作る菖蒲を、悟は胸に抱き寄せた。

「いいに決まってるだろ。俺は菖蒲がなんであれ、愛してる。幼稚園の先生でもなんでも、思い切り楽しんでいい」

菖蒲の身体を慈しむように抱きしめ、悟は腕の中で涙を流す菖蒲に言い聞かせている。