御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました～愛を知らない彼女の婚前懐妊～

タブレットが置かれていた周辺にはイギリスのガイドブックが何冊も重なっていて、たくさんの付箋が貼られている。

他にも英会話やテーブルマナーなどのテキストが無造作に置かれソファの足元にも似たような本が何冊も積まれている。

ここ最近増えた本は他にもあり、菫は時間を見つけては目を通している。

「へえ、日本食のお店って意外に多いんだ」

イギリスに関するページを眺め、日本食の店以外にも観光地はもちろん病院や保育施設などを確認していく。

海外未経験の菫には目新しいことばかりで、つい夢中になる。

マップ機能を使って紅尾システムソリューションのロンドン支社近辺を見ると、そこは高層ビルが建ち並ぶオフィス街だった。

そこで黎は今仕事をしているのだ。

そしてきっと、近いうちにそこに異動するのだろう。

黎がどの辺りに住むのかはまだわからないが、きっとここからさほど遠くないはずだ。

菫はあらゆる角度からその周辺を探索し、地理関係を頭に入れる。

そのとき部屋に来客を告げるベルが鳴り響いた。

モニターを覗くとコンシェルジュの女性が立っている。

「お預かりした宅配をお届けにまいりました」