御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
これさえあれば英語が苦手な菫でも、安心して黎の赴任先についていける。

便利なものはなんでも利用して効率よく進めればなんとかなる。

菖蒲に言った言葉は菫にも当てはまる。

翻訳器の利用もそのひとつで、ネット社会と言われている今は整備された環境をうまく活用すれば世界のどこにいても仕事も完結できる。

家庭事情によって在宅勤務を選択できる富川製紙が海外での在宅勤務を認めているのかはまだ調べていないが、菫は可能であれば申請したいと考えている。

黎が海外赴任するのならそれがどこであれついていくつもりだ。

そして今の仕事も続けたい。

「そのための翻訳器だよね」

菫はラグの上に腰を下ろし、うきうきしながら設定を始めた。

スマホでさえ最低限の機能しか使いこなせていない菫は、何度も説明書を読み返し進めていく。

そしてようやく無事に完了しホッと息をついたとき、再び部屋に来客のベルが鳴り響いた。

「そうだ、あれかな」

菫は翻訳器以外にも海外について基本から学ぶために〝しゃべる地球儀〟も注文していたのを思い出し、それが届いたのだろうとモニターを確認することなくいそいそと玄関に向かった。

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