御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
第二章 想いも身体も重なった夜
誰もがよく知る高級住宅地に黎の自宅はある。

何度か訪れたことがある高層マンションを見上げ、菫はその高さに圧倒される。

世界屈指の大企業のトップや芸能人、政治家たちがこぞって購入し販売開始と同時に完売したという豪華なマンションだ。

緑が多い地方で育った菫にとって、テレビで見るしかなかった別世界。

ここに来るたび緊張で足どりがぎこちなくなる。

「ほら、行くぞ」

タクシーを降りた途端、黎は菫の手を掴みマンションのエントランスへと向かう。

敷地内に入るにも警備員が見守るゲートにカードキーを通して解錠し、その後しばらく歩いた先にあるエントランスでも暗証番号を入力しなければマンションには入れない。

もちろんマンション内にも警備員が常駐し、まるでホテルのように豪華なロビーにはコンシェルジュが複数人待機している。
 
カウンターに立つ顔見知りのコンシェルジュに軽く頭を下げる黎につられ、菫も会釈する。

ここに来るのは初めてではないが、いつもなら航や果凛も一緒だ。

こうして菫ひとりが訪ねるのは初めてで、コンシェルジュにどう思われているだろうと居心地が悪い。
 
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