御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
むしろ菫の口数が少ないのは他でもない、黎のせいなのだ。

こうして黎の部屋にふたりきりでいて、平然と話せるわけがない。

今も菫の心臓はばくばく大きな音を立てていて、呼吸するだけで精一杯だ。

「菫、もしもまた今日みたいなことがあったら、俺に電話しろ。そうじゃなくても困ったことがあればどんな些細なことでもいいから俺に頼れ。いいな」

「黎君に? それは申し訳ないよ」

親しくしているとはいえ限度がある。

今日みたいに偶然顔を合わせたときでもなければ頼るつもりはない。

「俺がずっとついていられたらいいんだけどな」

「……え?」

「今日みたいなことがこの先もあるかも知れないし。いや、きっとあるだろ。菫は綺麗でそこにいるだけで男の目を引くからな」

菫はぽかんとする。

自分が綺麗だとは思わないし、男性からの視線を感じた記憶もない。

「いくら私が心配だからってそんなお世辞は必要ないよ。今日みたいなことって初めてだし、男の人と飲む機会は滅多にないから。黎君にそこまで心配してもらわなくて大丈夫。理由もないし・・・・・・でも、ありがとう」

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