御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「あの、まさか私たちのために取り寄せてくれたの?」

果凛にいたっては、その後自分でも取り寄せるほど気に入っていた。

きっと黎はそのことを覚えていたのだろう。

「……もしも足りなかったら追加するから言って」

黎は菫の問いに答えるでもなく立ち上がると、菫の隣に腰を降ろした。

その途端、シャワーを浴びたばかりの黎の身体からミント系の香りが漂い、菫は思わず息を止めた。

ボディソープなのかシャンプーなのかわからないが、今まで知らなかった黎の日常を垣間見た気がしてドキリとする。

「あ、菫も風呂に入ってくれば?」

「ううん、家に帰ってから入るから大丈夫」

着替えもなにも用意していないからと菫が断った途端、黎の表情が曇った。

菫の言葉に納得がいかないのか、眉も不機嫌そうに寄っている。

「あ、あの?」

「家に帰すつもりはない。いい加減、それくらい理解してくれ」

黎は菫の顔を真っすぐ見つめ、きっぱりと言い放つ。

その語気の強さに気圧され、菫はソファの上で後ずさる。

このままだと黎に言われるがままこの家でひと晩を過ごすことになりそうだ。

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